コロナ下のホテル取得で成長 ABキャピタル、東京大阪に照準 (NNA Asia)
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香港の新興投資会社ABキャピタル・インベストメントは新型コロナウイルス禍の中、日本のホテルへの投資で急成長した。価格の急降下を商機ととらえ、東京と大阪の中小ホテル3軒を取得。年10%以上の分配金を投資家に還元している。甘永カイ(アラン・カム、カイ=かねへんに皆)最高経営責任者(CEO)は、日本の魅力は「金利の低さとファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の高だ」と指摘。向こう数カ月で2軒の追加取得を予定する。

甘氏は2020 年に日本の不動産への投資検討を開始し、21 年に共同設立者である李冠リョウ(ブライアン・リー、リョウ=木へんに梁)氏とABキャピタルを設立した。コロナ禍で世界のホテル業界は大不況に陥ったが、20 年12 月に大阪・心斎橋の「心斎橋クリスタルホテル」(現在ブランド刷新中)、21 年6月に東京・浅草の「プロスタイル旅館 東京浅草」、22 年3月に東京・歌舞伎町の
「ホテルリブマックス新宿歌舞伎町明治通」を取得。「固定賃料ストラクチャー」を採用して安定的かつ確実性の高い利回りを実現し、投資家に年率10%以上の配当金を出している。
「掘り出し物」多い
運用中の「ファンド1」は東京・大阪の中小・ビジネスホテルに照準を絞り、1億米ドル(約128 億円)の運用資産残高(AUM)を目指している。
なぜ日本のホテルなのか。
東京五輪の開催が決まった日本では、19 年末以降に新しいホテルの供給が激増した。一方で、新型コロナの流行により金融機関がホテル投資に対するローン貸し付けを停止。買い手を失ったホテルの価格は大幅に下落した。
優良なホテルですら「激安で売られていた」ことから、日本の大都市のホテルをターゲットに定めたという。

コロナ禍でインバウンド客がいない間も、国内客だけで高い客室稼働率を保っていた東京・大阪のホテルしか買わない。「ホテルリブマックス新宿歌舞伎町明治通」の22 年の平均稼働率は80~90%。「運営状況が良好なのに値段が極めて安い、掘り出しホテルが東京や大阪には数多く存在する」と甘氏は語る。
低金利に投資家殺到
甘氏は日本の不動産市場の安定性を高く評価する。安定性の根底にあるのは、政策によって保たれている金利の安さ。「世界のほとんどの国で金利が上がり、物件を買って賃貸に出してもローンがカバーできない状態。それが日本では税金を控除してもなお、投資家に10%以上の配当金を出せる」と力説する。
国内市場だけで経営を維持できるファンダメンタルズの高さと、先進国で投資の環境・システムが整っていることなども日本の魅力だ。甘氏によると、円安も手伝って日本の不動産市場には今、米国やシンガポール、香港、台湾などからファンド、投資家が押し寄せている。

世界がコロナ禍から立ち直り、インバウンドの本格回復に向けて日本のホテル業界は活気を取り戻し始めた。競合も増えているが、この2年で築いたノウハウと信頼により「今後を楽観できる」と甘氏。見通しや予測ではなく稼働率や財務諸表といった「今あるデータ」に基づいて取得ホテルを選び、「リスクがほとんどない好物件」だと判断したら1~2日中に取得を申し出る。
売買契約書(PSA)など、さまざまなシナリオに対応可能な書類のテンプレートを最初の3件の取引で完成させた。契約までのスピードではどんな競合にも「負けない自信がある」。
他社が投資を控えた最悪な時期に3件の取引を実行したことで、日本の中小ホテル業界からの信頼も勝ち取った。競合が増えてもこれまでに築いたつてなどから「優良ホテルのオファーを優先的にもらえるようになった」という。
ホテルの価格も2年前に比べれば大幅に回復しつつあるが、供給量が多く「まだまだ掘り出し物件がある」。ABキャピタルは6月までに東京と大阪で1軒ずつの追加取得を予定。2軒の買収後、ファンド1のAUMは目標とする1億米ドルに達する見通しだ。
今年下半期(7~12 月)にはAUM5億~6億米ドルを目標とする「ファンド2」を設立し、ホテルを核としながらオフィスや住宅にも手を広げていく考えだ。甘氏はまだ30 代前半。「10 年後のインフラ投資などを見据えて、時間をかけて経験を積めることもABキャピタルの強みだ」と語る。
投資家には香港の不動産系コングロマリット(複合企業)の関係者が名を連ねており、資金集めは懸案事項ではない。甘氏は「最も難しく、最も重要だと感じているのは優秀な人材の確保だ」とコメント。特に日本での採用を加速し、事業拡大のために「チームを早急に大きくしていきたい」と意気込んだ。
Source: https://www.nna.jp/news/2461034